口唇ヘルペスは単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus;HSV)によって引き起こされる感染症である。HSVは初感染後に神経節に潜伏し、紫外線等による刺激や細胞性免疫の低下によって再活性化する。現在、HSVを根絶する治療法は存在しておらず、生涯にわたって再発を繰り返すため、患者のQOLを著しく低下させる。日常診療でも遭遇する機会が多い疾患であるが、本邦ではまだ網羅的な単純疱疹の診療ガイドラインが策定されておらず、その必要性が高まっている。
また、近年診療では様々な変化が起きており、最新の情報を周知させることが重要だと考える。診断面では、イムノクロマト法による迅速ウイルス抗原検査キットの登場により、帯状疱疹等との鑑別が困難な症例でも、外来での迅速な診断が可能となった。治療面では、2019年にファムビル、2023年にはアメナリーフがPatient Initiated Therapy(PIT)による治療の選択肢として加わり、再発性の口唇ヘルペスや再発性の性器ヘルペスに対する早期治療介入が可能となり、患者のQOL向上に貢献している。PITは海外では既にスタンダードな治療法とされており、今後、本邦でのさらなる普及が期待される。
本講演では、再発性口唇ヘルペス診療の現状とあるべき姿について、単純疱疹診療ガイドライン策定に向けて検討している事項を踏まえて考察したい。
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